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中学では、酸化は酸素と化合すること。還元は酸素を失うこと。と習うけど、実はそうではない。(完全な間違いというわけではないが)普通の中学生に、電子がどうのこうの言っても、なかなか理解できないから、これは、まあ仕方ないとは思う。前置きは、ともかくとして、まずは、酸化・還元の定義から。
<酸化と還元>
酸化…物質が電子を失う反応。(相手に電子を与える反応) A→A++e– 還元…物質が電子を受け取る反応。(相手から電子をもらう反応) B+e–→B– つまり、酸化還元反応は、電子のやり取りなわけです。 |
中和反応は水素イオンのやり取りだったわけですけど、やり取りするものは違うけど、計算問題は同様に考えれば良いわけです。「還元剤が失った電子のモル数=酸化剤が受け取った電子のモル数」の式が、酸化還元滴定で過不足なく反応したときの関係です。
で、ここで多く人に問題が生じてしまうわけです。そうです。酸化剤と還元剤ね。
酸化剤は、相手を酸化させる物質。(だから、自身は還元)
還元剤は、相手を還元させる物質。(だから、自身は酸化)
ここを間違えてはいけない。解熱剤って、服用した人の熱を下げるお薬であって、解熱剤自体の熱(温度)が下がるわけではないですよね。つまり、~剤というのは、相手をどうさせるか?ということなのね。
そんなわけで、酸化剤・還元剤の半反応式は覚えないと、どうしようもない。でも、教科書や参考書を見れば分かるけど、あの係数を覚え切れるわけがない!ここで、覚えるコツを!例を出して解説します。
<例>濃硝酸 HNO3
①酸化剤・還元剤から何が出来るか?これは覚えなきゃダメ。
HNO3→NO2
②水H2Oで左辺と右辺のOの数を合わせる。(→は=と思って!)
HNO3→NO2+H2O
③水素イオンH+でHの数を合わせる。
HNO3+H+→NO2+H2O
④電荷を電子e–で合わせる。
HNO3+H++e–→NO2+H2O
因みに、濃硝酸は電子を受け取ってるから、自身は還元。つまり酸化剤となる。
<例>二クロム酸カリウム K2Cr2O7
①Cr2O72-→2Cr3+
②Cr2O72-→2Cr3++7H2O
③Cr2O72-+14H+→2Cr3++7H2O
④Cr2O72-+14H++6e–→2Cr3++7H2O…A
<例>硫化水素
①H2S→S
②Oはないので、水は使わない。
③H2S→S+2H+
④H2S→S+2H++2e–…B
酸化還元反応は、半反応式で電子を消去すれば良いだけ。例えば、二クロム酸カリウムと硫化水素の反応はA+B×3して電子を消去。
Cr2O72-+14H++6e–→2Cr3++7H2O
+) 3H2S→3S+6H++6e–
Cr2O72-+8H++3H2S→2Cr3++7H2O+3S
硫酸酸性中であれば両辺に2K+と4SO42-を加えて
K2Cr2O7+4H2SO4+3H2S→Cr2(SO4)3+K2SO4+7H2O+3S
とすれば良い。まあ、実際、この反応が問題に出ることはあまりないと思うけど。
で、前述したことではあるけれど。
<酸化還元滴定>
酸化還元滴定の終点では 還元剤をA、酸化剤をB、濃度をC[mol/l]、体積をv[ml]、価数をnとすれば CA×vA/1000×nA=CB×vB/1000×nB 還元剤のモル数×価数=酸化剤のモル数×価数 還元剤が与える電子のモル数=酸化剤が受け取る電子のモル数 |
となるわけです。ほぼほぼ、中和滴定と同じでしょ?
次回は、酸化・還元②ということで、電池と電気分解!