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塾長作文

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“Fall is the best season for art.” at Total Academy 2023の作文紹介

 ”Fall is the best season for art.” at Total Academy 2023の開催に及んで、生徒達に作文を強制的に書いて貰いました。生徒達が書いてくれた作文をホームページ上でも紹介しようと思います。生徒にやらせる以上、やらせた本人である僕も書きましたので、まずは塾長の作文から掲載し、生徒の作文は、カエルの「基本にかえる!?」の掲載記事としてひとつひとつ紹介しようと考えています。先陣を切る塾長の作文ですが、例年、堅苦しいことを書いている傾向がありましたので、今回は旅行記にしてみました。それでは、お読みください。

秋の旅行 

 私の誕生日は秋である。毎年その頃に旅行に出掛ける。今回も、海にするか山にするか迷った。最初は寺泊で美味しい魚に舌鼓を打ち、日本海の夕陽を眺め、温泉に浸かるのも良いだろうと考えていた。しかし、色々と新潟県の観光地を調べているうちに、奥只見という場所に心が魅かれた。勿論、以前から奥只見という場所は知っていたし、10年以上前であるが、奥只見シルバーラインも通ったことがあるし、日本でも有数の大きさを誇る奥只見ダムがあり、それによって形成されている奥只見湖の遊覧船から見る紅葉は有名であることも知っていた。以前から一度くらいは尾瀬沼にも行ってみたいと考えていた。群馬県側の鳩麦峠からのルートで尾瀬ヶ原は行ったことがあるのだが、尾瀬の広さは東西約6㎞、南北約3㎞と広大であり、鳩麦峠から尾瀬沼までは険しい道程ではないが、かなりの距離があるため、尾瀬の山小屋で一泊する必要があると考え、二の足を踏んでいた。山小屋には宿泊したことがないため、その不安もあり、余計に尾瀬沼まで行く決断は出来ずにいた。しかし、福島県側の沼山峠からのルートは、どのルートよりも尾瀬沼まで最短で辿り着くこともあり、奥只見の銀山平に宿泊すれば、時間的にも体力的にもそれほど過酷ではないだろうと判断し、今回、その決断に至った。これが、尾瀬、奥只見を選んだ理由である。

 尾瀬と奥只見について説明しよう。福島・群馬・新潟の3県にまたがる尾瀬は本州でも最大規模の高層湿原である。木道やベンチなどが整備され、希少な自然を間近にしながら、ゆったりと散策を楽しめる。尾瀬ヶ原、尾瀬沼を囲むように標高2000m級の山々が聳え、東側は東北以北の最高峰の燧ヶ岳、西側は至仏山が鎮座する。6000〜7000年もの長い年月をかけてつくられた湿原などの貴重な自然を守るべく、国立公園に指定されている。国の特別天然記念物でもあり、ラムサール条約登録湿地でもあり、一度崩壊したら、容易には取り戻せない生態系や景観が、厳しく保護・保存されている地域だ。年の半分は雪に閉ざされていて、5月半ばごろまで雪が残る。雪解けと共に春が訪れ、短い夏に山や湿原の花々が咲き乱れる。9月上旬には草紅葉、10月には雪が降る。その厳しい環境条件が美しさを創り出しているのである。

 新潟県魚沼市の秘境と言われる奥只見は、紅葉のスポットとしても有名である。2000m級の山々に囲まれ、新潟・福島県境を流れる只見川上流地域にある。越後三山只見国定公園に指定されている。日本屈指の貯水量を誇る奥只見ダムによって造られた奥只見湖には巨大なイワナやヤマメが泳ぎ、空には国の天然記念物であるイヌワシが舞う。江戸時代には、銀の採掘場として栄えたが、現在、その銀山跡の大部分は奥只見ダムの湖底に眠っている。そのため「銀山湖」とも呼ばれている。魚沼市街地から奥只見へ向かう奥只見シルバーラインは、全長22㎞、トンネルの数は19本でトンネルの総延長距離は18㎞であり、ほぼトンネル内を走ることになる。トンネル内には手掘り跡もあり、冒険心と恐怖心が湧き出てしまう道路である。

 当日未明、朝一番の沼山峠行きのバスに間に合うように御池駐車場へ向けて出発した。関越自動車道を利用したのだが、群馬県側は見事な星空を見ることができる程の天気だったが、トンネルを抜けるとそこは雪国ではなく、大雨だった。これはどうしたものか?と迷った。折角、撮影機材、着替え等をリュックにパッキングしトレッキングの準備をしたこと、尾瀬に向かって、新潟県まで来てしまったことを考えると、口惜しい想いもあった。しかし、安全面、雨に濡れてのトレッキングの大変さを考慮し、今回は尾瀬行きを見送った。残念ではあるが、尾瀬は逃げることはない、次回の機会にしようと決断した。尾瀬は断念したが、ではどうしようか?と考え、結局、当初予定していた寺泊に行くことにした。取り敢えず、越後川口SAで休憩を兼ねて、リュックの中の撮影機材を取り出し、寺泊でスナップ撮影できるように準備した。このとき時刻は午前5時過ぎ、朝のラッシュを避けるため、寺泊に到着してから仮眠をしようと、そのまま寺泊に向かった。

 寺泊に到着したのは午前7時頃、青空から朝陽が差す天気に変わっていた。魚の市場通りの大駐車場に車を置き、朝の海を散歩した。この時期にしては、暖かい朝で、風も心地良く、海も雨上がりとは思えない程、穏やかであった。砂浜の海岸から遠く臨む佐渡島の景観美、寺泊港のクレーンの造形美、これらを堪能した。当然ながら写真も撮ったが、やはり朝の光の中の光景は格別であり、それは現場でも、写真を見てもはっきりと分かるものである。軽く散歩した後、まだ開店には早いので、仮眠を取り9時半頃に目を覚ました。

 寺泊は、その名前の如く神社仏閣が多く、北の鎌倉と呼ばれている。寺泊に行く予定ではなく、下調べもしなかったので知らなかったのだが、「つわぶき祭」の開催期間中で、神社仏閣巡りのスタンプラリーの応募受付をしていた。スタンプは12ヶ所の寺・神社に置かれ、そのうち5ヶ所のスタンプを応募用紙に押せばよいのである。新潟コシヒカリ一俵の景品に魅かれ、5ヶ所を訪れた。実は、寺泊と言えば「良寛さん」、良寛さんは江戸時代、積極的に子供と交わり、読み書きを教えるだけでなく、一緒に子供達と遊んだ人で、今も愛されている人物である。職業柄、そういう人に肖りたいと思い、良寛さんが住んでいた密蔵院がある照明寺に立ち寄ったときに、スタンプラリーの存在を知ったのである。その照明寺で、最初のスタンプを押した。車で聚感園前の駐車場に行き、そこに車を置き残り4つを廻った。聚感園は、順徳天皇が行宮の際、お過ごしになった地であり、その敷地内には、源義経・弁慶主従が北国落ちの時に宿され、弁慶が自ら掘ったといわれる井戸がある由緒正しい場所である。その聚感園を見学したあと、良寛さんの妹のむらの墓がある法福寺、オルゴール塔のある生福寺、伊弉冊尊と菊理媛命を御祭神とする白山媛神社、日蓮聖人と関り深い祖師堂と4つのスタンプ設置場所と、二面神社、諏訪神社を訪れた。特に印象的だったのは、二面神社である。ご神体は、綱を持って魚を獲る西洋人の像を透かし彫りにした横39㎝、縦82㎝の板で、男女の神がそれぞれ表裏に存在し、何とも奇妙なものである。専門家によると、これはスペインなどの国の船首像で、大航海時代以前に、この二面像がどこから、どんな経路で、ここ寺泊に辿り着いたのかは、今も謎とされているとのことだ。春は女神の像を正面に、秋の祭典の時には反対に男神の像を正面に向けるらしい。何故、西洋人の二面像を寺泊の漁師達が古くから、大漁と海上安全を願って祀っているのか、不思議さと浪漫を感じた。

 スタンプラリーも終わり、応募箱に投函したのが正午過ぎ。宿泊予約していたホテルが奥只見の銀山平にあるため、時間的な都合から、魚の市場通りで名物の浜焼き、番屋汁と寿司を昼食として頂き、寺泊を後にした。味については、言うまでもなく、美味いの一言だった。

 下道を進み、更に、前述した奥只見シルバーラインを通り、銀山平に到着したのが午後4時前。シルバーラインでは、前々から考えていた通り、走行中の動画を撮影した。あとで、ホームページの記事にて紹介できればと考えているので楽しみにして欲しい。感想はと言うと、運転していて、楽しかった。ワクワクした。これを手掘りで、しかも短期間に、しかも60年以上前に施工されたものだと考えると、驚くばかりである。正直、これは一種のアトラクションである。そのくらい興奮を覚えるものであった。

 宿に到着し、温泉に浸かり、夕食を堪能した。奥只見山荘というところに泊まったのだが、ここの料理が素晴らしい。何を食べても美味しいのだ。和食とイタリアンを掛け合わせた創作料理は、ここでしか味わうことのできないものだろうと思う。地元産の米、野菜、肉を使った料理は絶品だった。宿の雰囲気、景観も素晴らしく、晴れた夜は、美しい星空を見ることができるであろう。残念ながら、この日は夜から雨になってしまい、星空撮影は叶わなかったが、料理と温泉で心身ともに癒され、次の日の朝を迎えた。

 朝風呂という贅沢と所謂THE旅館の朝飯の定番を味わった。流石、新潟産コシヒカリ、名実共に本物だと思いながら、天然なめこの味噌汁の風味に満悦した。9時過ぎに宿を後にして、奥只見湖に向かった。

 前日通ったシルバーラインを進み、奥只見湖に到着。駐車場から目に入る景色は、まさに「秘境奥只見」、 険しい山々と大きなコンクリートの塊である。ダムを目の前にする度に、犠牲者のことを考えてしまう。当時の技術で、困難が多い場所に巨大なものを造るのに、一人も犠牲者を出さずに作業を行うのは無理な話だと思う。しかも、今では労働基準法違反であろう突貫工事を遂行したのだから、尚の事である。だから、私はダムに立ち寄ると必ず、慰霊碑の前で手を合わせ、その人達に感謝する。それ程にダムと言うのは畏敬の対象なのである。

 スロープカーで駐車場から、ダムの堤まで上がり堤防を歩いた。湖側は、当然、絶景であるのだが、反対側にも面白い景色が広がる。発電所がある場所なので、電線の数が多いのだ。大自然の中の巨大建造物と長い電線、この取り合わせは中々面白く感じるのである。こんな辺鄙な場所でも人間の生産活動があることに、人間の業の深さを感じてしまう。そんな感情を抱きながら、乗船所まで歩いていった。

 遊覧船に乗った途端、澄んだ空気と空、燃えるような紅葉の木々と山々、湖の深さを物語る濃い水の色、秋の風の音が一気に襲いかかり、先の感情など飛んでしまった。約40分余りの船旅では、至福の境地に至り、カメラのシャッターを数百回切ってしまった。こちらの方も、後日ホームページの記事として掲載予定であるので、お楽しみに。実は、船上での撮影は、なかなか難しい。船は動き、揺れているので、水平を取ること、ブレずに撮ること、思った構図通りに撮ること、これが難しい。自分が静止していれば、静止物ならゆっくり考えながら撮影しても問題がない。しかし、自分の乗っている船は動くのである。しかも、揺れるので、しっかり構図を決めるのは至難である。だけども、自分が動いていることならではの写真も撮れる。ここに写真の面白さがあると感じた。撮影行為と共に秋という季節を大いに満喫し大満足し、帰路に就いた。

 今回の旅行は、予定とは違ったものになったが、それはそれで良かった。今まで知らなかった寺泊の魅力を知ることもできた。尾瀬には行けなかったが、その分、次に行くときは、余計に楽しめるだろうと思っている。旅は、その場に自分の身を置き、現地を目にし、現地の人と会話をし、現地の雰囲気を感じることが大切であると改めて思った。頭だけの知識では、知り得ない、分かり得ない、感じ得ないものがある。ネットで獲得できる情報など、ほんの一部に過ぎない。まさに「百聞は一見に如かず」であると痛感した。

学習塾Total Academy塾長 齋藤勉

塾長の一言

 この秋の旅行についての写真等は、近いうちにホームページ上でも掲載しようと思います。そちらもお楽しみに。授業で見せる塾長とは違う塾長が見れると思います。それはともかく、必ず尾瀬のリベンジを果たそうと思っています。来年か再来年には・・・。とメラメラと復讐の炎を絶やさずにいたいです。

会場写真

2023.10.30撮影

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