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化学を受験科目とする受験生への簡単なアドバイス(初級編)
化学を受験科目とする人への初歩的なアドバイス
今回は、化学を受験科目としている、若しくは考えている高校生に向けて書きます。まだ、化学の勉強を始めて間もない人に向けた大雑把なアドバイスです。興味のある方は読んでみて下さい。レベルの高い、細かな話は、ここではしません。
化学は、数学や物理とは違う!
「化学は、物理よりセンスを必要とせず、生物より暗記する量も少ない。だから、受験科目としては、有利だ。」と言う人もいれば、「化学計算は、物理計算と違って、何を求めているのかわからない。」と言う人もいる。確かに、暗記しなくてはならない知識量は、物理の2倍程度で生物の半分程度かもしれない。でも、物理だろうが、生物だろうが、理屈やメカニズムの理解が無ければ、暗記してもあまり役に立たない。それは化学にも言えることだ。そして、化学計算は、数学とは明らかに違うし、物理みたいに文字での計算をすることもあまりない。理系科目の中でも、特殊であるとは思う。単位の扱いが物理とは異なる。例えば、圧力は、物理なら〔㎩〕(パスカル)を使うが、化学は〔atm〕(気圧)を使う。体積も、物理なら〔m3〕だが、化学は〔ℓ〕を使う。これが、混乱を招く原因の様な気もする。実はこれ、大学に行くと、物理と同じで、化学も、いわゆるSI単位(国際単位系)で統一される。個人的には、ならば、高校からそれでやれば?とは思う。あとは、濃度の種類が複数あること。物質量〔㏖〕と言うものが、分かりづらいと言うのもあると思う。この辺りのことは、ぽんすけの「数物化の公式解説」で記述しているので、そちらを参考にして下さい。
どんなことを意識しながら勉強すると良いの?
では、どう考えると理解しやすいか?いや、どう意識すると良いか?を話して行こうと思う。化学は、大きく分けて3つの分野に分けられる。①理論化学②無機化学③有機化学だ。これは、はっきり言って、別の科目と思って良い。無論、関係性はあるが、最初の段階としては、別科目と言う感覚で良い。理論化学・無機化学・有機化学と分けて説明して行きますね。
理論化学の話
理論化学こそ、化学の基本!
まず、理論化学。物理と同じで、理屈なので、物理が言葉の定義をきっちり理解しなきゃならないように、(じゃないと、式が立てられない。)まずは、アボガドロ数、物質量、濃度の定義を頭に叩き込む。特に、濃度と体積と物質量の関係(関係自体は難しいわけではない。)を意識して、自分が計算しているとき、今、濃度を求めているのか?その濃度の単位は?モル数を求めているのか?と、計算しているのは何なのか?何のために求めているのか?ここを強く意識して下さい。これを意識して、訓練することによって、問題を解く上で、何をすべきか?が見えて来ます。濃度関係の計算が出来るようになれば、中和滴定、酸化還元滴定も余裕です。計算の面倒臭さはるけど、中和だろうが、酸化還元だろうが、「水素イオンのモル数=水酸化物イオンのモル数」、「放出する電子のモル数=受け取る電子のモル数」とすれば、求めたいものは求まります。反応速度や化学平衡(電離平衡や緩衝溶液や溶解度積も化学平衡の一種)は、理屈さえ理解できれば、計算はそれほど複雑でない。只、何をどう近似するのか?は、何回か問題を解くことをしないと身に付かないとは思う。とにもかくにも、濃度の計算をマスターすれば、化学計算は、ほぼほぼ大丈夫です。
無機化学の話
無機化学は暗記が中心。でも、系統立てて覚える!
無機化学。これは、はっきり言って暗記です。典型元素は、最外核電子の数から、その性質は理解できるけど、遷移元素は、それぞれ覚えてしまうしかありません。逆に、典型元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン元素、希ガスとその最外核電子数と性質の関連性を理解しておくべきです。問題は、気体反応と系統分析です。気体反応は、硝酸の生成方法であるオストワルト法と硫酸の生成方法である接触法、アンモニアの生成法のハーバーボッシュ法の3つは、典型元素の窒素と硫黄で出てくるので、酸化還元と合わせて、化学反応式を導き出せるようにしておこう。(先に、別科目と言ったけど、関連性はあるからね。)あとは、硝酸は「濃」と「希」、硫酸は「熱濃」と「希」で振る舞いが違うからね。そして、系統分析です。アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、銅、銀、鉛、スズ、アルミニウム、亜鉛(ニッケルやカドミウムは除外しても、まあ大丈夫。でも、自分の行きたい大学のレベルに合わせてね。)が溶解している溶液に対して、希塩酸、硫化水素(酸性条件か?塩基性条件下か?)希硫酸、アンモニア水、炭酸アンモニウムなどの試液で、何が沈殿して、何色になるのか?を覚えて下さい。沈殿の色は、ほとんどが白色なので、白以外の色を覚えて下さい。正直、無機化学は、覚えることが中心です。
有機化学の話
有機化学は、官能器を覚えればパズル感覚。
そして、有機化学。まずは、炭素‐炭素間の結合を含む、官能器の性質と構造式、示性式を覚えること。これは、そんなに数はあるわけではないので、覚えるのはそれほど難しくはない。最初は、参考書や自分で作った表を見ながら、問題を解いていけば、覚えようとしなくても、ある程度数をこなせば、覚えてしまうはず。そして、その官能器が存在する物質の一般名と一般式、そして、起こる反応を整理して行く。特に、アルコール、アルデヒド、カルボン酸の関連性は重要です。芳香族化合物は、ベンゼン環の特性と、ベンゼンから合成される化合物の流れ(カップリング反応まで)は、頭に入れて欲しいところです。そうすれば、化合物を特定する問題は、9割以上解けるはずです。あれは、パズル感覚で出来ますから。(官能器の特性が頭に入っていることが、絶対条件ですけどね。)糖、アミノ酸、タンパク質、合成高分子のところは、脂肪族・芳香族化合物のところがある程度分かっていないと手を出さない方が良いです。まずは、脂肪族と芳香族の問題を解ける様にしておくことです。それから、糖、アミノ酸、タンパク質、合成高分子を手掛けた方が良いでしょう。最悪、入試一月前くらいでも間に合いますから。何故なら、計算問題でややこしいのは、縮合反応で脱水される分を考慮するくらいで、あとは、検出反応の色や特徴を抑えて、合成高分子で出てくる熱硬化性、熱可塑性、一次元鎖状構造、三次元網目構造とかの言葉がどういうことか説明できるようになれば、ほぼ大丈夫です。
理解と暗記の両輪で!
最終的には、理屈とメカニズムをきちんと理解することを目指そう♪
まずは、理論化学をきちんと理解すること。モル計算、濃度計算が出来ないことには、化学は始まりません。この部分が出来るようになれば、あとは何とかなります。勉強というのは、理屈・理論を理解するのが大事ですが、それが出来ないレベルに自分がいるなら、暗記してしまう、覚えてしまうのも手段です。問題を解くことを積み重ねて、後から「あれは、こういうことか!」とわかることも多々あります。最初に、「理屈やメカニズムの理解が無ければ、暗記してもあまり役に立たない。」と書きましたが、最初から、そこに立つのは難しいことです。最終的に、そうなるべきだと言う意味なので、矛盾してると言わないで下さいね。正直、無機化学、有機化学の分野を理論的に説明しようとすると、大学、大学院レベルの理論が必要です。高校生が理解だけで化学の勉強を進めるのは、無理な話です。だからこそ、理解と暗記の両輪を使って、進めて行くと良いでしょう。その人の性格にも依りますが、自分のバランスで行って下さい。理系科目の場合、本当の理想は、理解10割、暗記0割ですが、実際、それは無理です。因みに、現役当時の僕は、理解に重きを置きました。でも、理論の話でも、2.3日考えて、理解できないものは、割り切って、「こういうものなんだ!覚えてしまえ!」と覚えました。でも、先述したように、問題をこなしているうちに、全てとは言えないけど、結構なものを理解できてしまうのですよ。だから、理解できないことにあまり落胆することはないですよ。相応の知識がないと理解は無理ですから。まずは、そのレベルになる必要があります。何はともあれ、理解と暗記を上手く使って、学習を進めて下さい。